成立要件

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不法行為
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不法行為の効果<
損害賠償
責任能力
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成立要件

不法行為の成立要件
過失と権利侵害(違法性)の一元化
上述の通り、過失の要件は、主観的な要素(加害者の不注意等)ではなく、客観的な要素(予見可能性に基づく結果回避義務違反)を基礎として判断されるようになった。
それに伴い、過失の要件と違法性の要件は、その内容にほとんど違いがなくなったことが指摘されている。
すなわち、違法性判断における違法性とは、<結果を発生させた加害者の行為が不法行為法上違法と評価されるか>の問題である。
これを権利に重点を置いて言い直せば、<侵害された被害者の権利・利益が不法行為法上保護されるべきか>の問題であるとも表現できる。
ここで「違法」や「権利侵害」の意義が問題となるが、判例によれば、ここにいう「違法」ないし「権利」は法律上の権利に限られないとされており、現在これに異論はないと思われる。
そうすると、不法行為法上の違法とはいっても、不法行為法においては、刑事法のような違法な行為類型についての明文の規定があるわけではなく、また行政法のように行政行為に根拠規定が必要とされてそれを欠けば違法となるわけでもないので(刑事法では「殺人罪」「傷害罪」「窃盗罪」等、明文の規定がある。
また、根拠規定を欠く行政行為は「違法な」行政行為である)、どこまでが不法行為法上の違法となるのか一義的には決まらない。
結局、ここでは、損害の公平分担や被害者救済、不法な侵害の抑止といった不法行為法の基本理念に基づき、加害者側の行動の自由と被害者側の権利利益の保護との均衡点を探ることが期待されていると解される。
具体的には、侵害された利益の性質や重要性、侵害の程度、加害者の立場・地位、あるいは侵害を避けるために必要な費用等の諸要素を総合衡量した上で、加害者の行為が違法か否か、あるいは、侵害された権利・利益が不法行為法上保護されるべきか否かの判断をすることとなる。
他方、過失の要件が客観化され、結果回避義務違反として捉えられた場合、その判断においても、上記と同様のことが言える。
なぜなら、過失判断における結果回避義務とは、<発生した侵害を避けるべき不法行為法上の義務があったか>の問題であるが、こうした不法行為法上の義務は刑法や行政法のように明文で規定されているわけではなく、一義的には決まらないので、結局、上記のような総合衡量に基づき判断するほかないからである。
こうして、過失概念が客観化されたことにより、その要件は違法性の要件とその大部分が重複するに至ったといえる。
このように、過失の要件と違法性の要件が重複するに至り、どちらか一方に一元化しようと試みる動きが学説に見られるようになる。
これに対し、通説・判例は過失の要件と違法性の要件を別々に維持している。
その理由の一つとして、両者はその大部分が重なり合うのは確かだが、なおそれぞれ重なり合わない独自の要素を有していることがあげられる。
また、両者を別個の要件と維持することによって、過失が認定しにくい場合には違法性を積極的に認定し、あるいは、違法性が認定しにくい場合には過失を積極的に認定することによって、事案に即し、柔軟に不法行為成立を認めることができるという利点をあげることができる。


損害の発生
損害の発生
何をもって損害が発生したと見るかについては争いがあり、大きく分けて差額説と損害事実説の2つの立場がある。
前者は「仮に加害行為がなかった場合の被害者の財産状態(α)」を想定した上で「現在の被害者の財産状態(β)」との差額(α−β)を「損害」と捉えるのに対し、後者は発生した事実そのもの(たとえば、被害者の死亡の事実そのもの)を「損害」と捉える点に違いがある。
差額説は要するに損害を金額で捉えようとする立場であるが、これは不法行為責任が金銭による損害賠償を中心とする点からすれば極めて素直な立場であるし(加害者にいくら賠償させるかは、被害者が加害行為のせいでどれだけ余計な出費をさせられたかによって決めるのが素直であろう)、すべてを金額に置き直す点で明確に損害を確定できそうに思われる。
しかし、精神的苦痛など必ずしも金額的損害があるとはいいにくい場合でも、これに対する賠償(慰謝料請求)を認めるのが一般的見解であるが、差額説によると、必ずしもその理論的根拠が明らかでない。
また、被害者が死亡した場合には将来の給与収入等(α)も損害の一項目として計算される(α−β;本来αの収入があったはずなのに、それが加害行為によってβに減ったから。
逸失利益と呼ばれる)。
しかし、将来の収入等(α)はあくまで仮定的な財産状態に過ぎないため、差額説によった場合、どこまでが加害行為に起因する逸失利益なのか、加害行為と損害との間の因果関係の画定が容易ではない。
こうした難点を克服すべく、損害事実説、すなわち、発生した事実そのものを「損害」と捉えるべきであるという説が出てきた。
この立場によれば、精神的苦痛を「損害」とすることは無理なく理解できる。
また、逸失利益の計算も、損害(たとえば、被害者の死亡の事実)の金銭評価にすぎないこととなるため、差額説で問題となった加害行為と逸失利益との間の因果関係の存否も理論上は問題とする必要がなくなる。
もっとも、この立場によっても、不法行為責任が金銭による損害賠償を中心とする以上、賠償額を決定する上で損害額がいくらか決定せざるを得ず、損害を金銭に評価しなおすことは避けて通れない。
そうすると、具体的金額を算出するためには、結局のところ差額説に立った場合と同様、どこまでを逸失利益と評価すべきか画定せざるを得ず、損害事実説が差額説に対する批判を十分に克服できているかどうかは疑問が残る。
以上の2説のうち、差額説が伝統的な理解であり、裁判例も基本的にはこの立場を採っているとされる。
ただ、裁判所では、裁判ごとに認定額にばらつきが生じるのを防ぐべく、事案に応じた相場表のようなものを用意している。
そして、損害額の認定においては、同表を参考にしたうえで、慰謝料等の損害項目を用いて金額調整が図られているようである。
この点からすると、実際の裁判実務は損害事実説に近い運用がなされているといえるかもしれない。


因果関係
因果関係
発生した損害と加害者の行為との間に因果関係がなければならない。
「あれなければこれなし」という関係(事実的因果関係)だけでは「風が吹けば桶屋が儲かる」のように際限なく関連性が認められる場合もある。
これを防ぐために適切と思われる範囲で制限するため、社会通念上、その行為がなければその損害が生じなかったことが認められ、かつ、そのような行為があれば通常そのような損害が生じるであろうと認められるような関係、つまり、相当因果関係(不法行為)という概念が用いられる。
公害事件等の場合については、被害の特性とその原因物質、原因物質の汚染経路について、状況証拠の積み重ねにより、関係諸科学との関連においても矛盾のない証明ができれば、法的因果関係の証明はあったものとされており、法的因果関係の立証については、一点の疑問もない高度の自然科学的証明ではなく、経験に照らして判断し、特定の事実が特定の結果をもたらしたことに通常人が疑いをさしはさまない程度のものであればよいとされる(最判昭和50年10月24日民集29巻9号1417頁)。
なお、刑法においても相当因果関係という概念が用いられるが、不法行為法上のそれとは必ずしも同一ではないので注意が必要である。
いずれも、無限定に広がりかねない因果関係を限定することによって、行為者に帰責すべき結果を相当な範囲に限定しようとする点において、同様の意図に基づくものといえる。
しかし、それが具体的にどのような場合に認められるかについては、不法行為法上も、刑法上も、依拠する立場によって少しずつその範囲を異にする。
   

責任能力
責任能力
不法行為責任を負うには責任能力がなければならない。
責任無能力者が責任を負わない場合には監督義務者の責任が問題となる(714条)。
未成年者は他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない(712条)。
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。
ただし、故意または過失によって一時的にその状態を招いたときは損害賠償責任を負わなければならない(713条)。
未成年者や精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(714条1項本文)。
ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、またはその義務を怠らなくても損害が生じたであろう場合には責任を免れる(714条1項但書)。
なお、監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も監督義務者と同様の責任を負う(714条2項)。

熟女
違法性阻却事由
違法性阻却事由が存在する場合には不法行為は成立しない。
違法性阻却事由には正当防衛や緊急避難などがあるが、それぞれ刑法上の正当防衛や緊急避難とは要件などが異なるので注意を要する。
 
正当防衛
民法上の正当防衛とは、他人の不法行為に対して自己や第三者の権利あるいは法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をしてしまうことであり、この場合には不法行為による損害賠償の責任を免れる。
ただし、この規定は被害者から不法行為者に対して損害賠償を請求することを妨げるものではない(720条1項)。
詳細は「正当防衛#民法上の正当防衛」を参照
 
緊急避難
民法上の緊急避難とは、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷してしまうことであり、正当防衛の場合と同じく不法行為による損害賠償の責任を免れる(720条2項)。
詳細は「緊急避難#民法上の緊急避難」を参照
熟女のことを学べる機会が増えてきた。


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